先行技術開発本部
本部長 吉田 康孝
制御設計開発本部
本部長 早川 喜八郎
①「空調のデジタル化」がかなえるものとは?
空気と熱のマネジメントを、デジタルの力で。
エアコンの重要なテーマに「空気質」があります。エアコンといえば、「温度と湿度をコントロールするもの」というイメージが一般的でしょう。しかし、私たちは以前から、空気の質を向上させることにも取り組んできました。内部カビの抑制機能である「カビバスター」などがその例ですね。空気質に対する注目は、コロナ禍によって一気に高まりました。マーケティングデータを見ても、こだわるお客様がはっきりと増えている。私たちも当然、空気質を意識した開発をより加速させたい。その中で、例えばセンシングや制御といった、デジタル系の知見が活きるシーンはますます増えていくだろうと思っています。
それに「熱マネジメント」ですね。熱はよく「エネルギーの墓場」と呼ばれます。ボールを転がすとそのうち止まってしまいますが、それは運動エネルギーが摩擦熱に変わるから。熱は大きな温度差がなくては使えず、熱の多くは使いどころがないので、それゆえの「墓場」というわけです。そんなありふれた熱を、わずかな電力によって効率よく、大きな熱をくみ出す技術があります。それが「ヒートポンプ」。当社の空調機器でも活用されています。
ヨーロッパでは再生エネルギーのひとつに定義されていますね。そのこともあって、世界的にすごく需要が高まってきている。
日本でもエネルギー需要の逼迫がたびたび問題になりますよね。ヒートポンプは、その解決に貢献しうる技術のひとつ。技術としてはすでに確立されていて、たくさんの企業が導入しています。しかし、当社では排熱の再利用(※)にまで踏み込んでいます。需要の高まりは追い風です。ただ、課題もある。例えば、使用されている冷媒は地球温暖化係数がまだ高い。これをできるかぎり下げつつ、性能は維持しなければならない。ハード面の工夫はもちろんですが、デジタルを駆使した運転効率化なども必要になってきます。
※捨てるはずの熱をエネルギーとして有効活用する方法。詳細はこちら。
エアコンは、スマートホームの中心になれる。
ルームエアコンの室内機は、部屋のすべてを見渡せるところに設置されますよね。それもエアコンの可能性だと思うんです。例えば、室内にいる人々の状況を正確に認識して、一人ひとりにとって最適な温度や湿度、空気質を自動的に生み出す。デジタルの力を高めれば、きっとそんなことだってできるはず。
いまのエアコンは人が温度を設定しているけれど、バイタルセンシングを使えば、エアコン側が最適な温度を決めて実行してくれるようになる。さらに、ほかの家電にもバイタルデータを連携して、生活環境を整える存在になっていくのかもしれません。人が機械に合わせるのではなく、機械が人にとことん寄り添う、人が中心となったシステムの主役になれる。
スイッチのオンオフさえ必要のない、まさに空気のように自然で、そこにあるのがあたりまえのもの。そうなると「まず家を買って、そこにエアコンを足す」というプロセスも変わるでしょう。家を買えば、スマートホームの中心として、エアコンが初めからそこにある。そうなれば、世界的な普及率だってさらに伸びていく。そんな未来を実現させるためにも、やはりデジタルの力をますます伸ばしていきたいですね。
②「デジタル人財」の定義とは?
デジタルリテラシーとは、「学び続ける力」。
スペックだけを挙げれば「ソフトウェアの知識があって、プログラムが書ける人」。とはいえ、この表現では狭すぎますね。新卒入社の方に、そこまでハイレベルなスキルを要求したいわけでもない。個人的には「学び続けることができる人」だと思っています。常に最新の技術動向に興味を持ち、常識にとらわれない着眼点やアイデアに着地させ、それを実行できる人です。それがイコール、デジタルリテラシーの高さだと言ってもいい。
先ほどはデジタル化の例として、製品開発についてお話ししました。しかし実際には、業務効率化やビジネスモデルの変革など、デジタルの活かしどころは非常に広い。そのすべてにおいて前例のない挑戦になるわけですから、学び続けられるかどうかはすごく大切なポイントですね。それに、ビジネスモデルや企業文化さえ一新してしまうような大胆さや、失敗を恐れない前向きさがある人も頼もしい。
デジタルといえばアジャイルであることが前提だし、必然的にトライ&エラーの連続になっていく。そんな暗中模索さえ楽しみながら、失敗をちゃんと糧に変えていけるかどうかですね。「ひとつうまくいったら大成功」という世界ですから、ひたむきさをなくさずに進める人ほど強い。アジャイルといえば、製品が世に出たあとのデータによるフィードバックも速く、充実したものになってきています。それにすぐさま対応し、迅速に課題解決ができることも求められていくと思います。それから、「社会のため」「人のため」という想いも持っていてほしいけど……ちょっと求めすぎかな(笑)。
それが必須とまでは言わないけれど(笑)。ただ、ヒートポンプエアコンはもともと、熱エネルギーの観点から社会の持続性に貢献してきた製品。環境性能についてはまだまだ高める余地があるし、世界的な普及率から見れば、成長産業に位置付けられてもいる。「社会に貢献したい」「世界に新しい価値を届けたい」と考えている方ほど、大きな手応えを味わえると思います。
③ 化学反応から生まれた、ユニークな環境とは?
技術の広さと深さが、イノベーションの確率を高める。
合弁企業である当社のユニークさといえば、やはり日立とジョンソンコントロールズのケミストリーにあると思います。
日立は技術の幅が非常に広いし、学会で第一人者のレベルの技術者がたくさんいる。その日立と、人も設備も交流できるのは当社のよさですね。空調を切り口に、最高峰の技術に触れることができる。一方、ジョンソンコントロールズはサイバーとフィジカルに強く、なんといってもグローバル。
私も前職で経験があるんですが、外資系メーカーの日本拠点では、本国がつくった製品のアレンジが開発の中心になることも多いんです。しかし当社の場合、グローバルでありながら国内で最上流から開発を行えるし、もちろん海外拠点との共同開発もある。
グローバルに活躍したい、最新の技術トレンドに触れ続けていたいという方にとっては、抜群の環境ではないでしょうか。それに、社風もデジタル寄りになってきていると感じています。かつては、確固たる目標を立てて必ず成功させる会社でしたが、いまはもう少し穏やかというか(笑)、トライ&エラーを繰り返しながら正解に近づいていくやり方ですね。
この時代のイノベーションとは、まったく新しい何かがいきなり現れるのではなく、既存の技術を掛け合わせて生まれるものだといわれています。つまり、保有する技術の幅が広ければ広いほど、イノベーションを起こす確率も高まる。当社は、技術の深さと広さを財産として受け継いだ合弁企業です。その財産を活かしながら、デジタル人財の斬新な発想を組み合わせたら何が生まれるのか。非常に楽しみですね。